日本操体学会創設 会長挨拶
日本操体学会会長
橋本 雄二
操体法は健康増進の論理です。ですから健康で幸せになるというのが本来の目的です。操体法はその効果から治療法と考えられてしまいがちですが、操体法の世界を支えているのは、治療だけではないもっと広い思想です。それは「息・食・動・想」と「環境」という面から健康を考えていることです。息をすること、食べること、動くこと、想うことは個人でしか行えないことです。これらの四つの基本行動それぞれの自然法則を集約したものが操体法です。それに「環境」がリンクするのです。ここで言う環境とは人間が作り出した社会生活を維持するための文化的・伝統的な環境も含みます。つまり個人の健康なくして世界平和はありえない。世界平和なくして個人の健康はありえないというのが操体法の考え方なのです。
私たちが健康に生きていくためには、四つの基本行動がバランス良く出来ていることが大切で、操体の道を究めようと頑張りすぎ、欲張りすぎ、さらには威張りすぎると健康も世界の平和もアンバランスになってしまいます。
最近の操体の広がりを見ますと、直接祖父に接し操体を学んだ方々が操体を伝えていた時代から、祖父を知らない世代がお互いに操体を伝え合う時代に移ってきていると実感させられます。その為か、伝える人受け取る人の感性の違いもあり、さまざまな操体が存在し混乱しているという声も聞こえてきます。しかし、操体は個人のものではなく万人の共有財産であるという考え方を基本に伝えていくことで、本当に大切なものがはっきり見えてくると考えています。
このような状況を踏まえ、操体に関わる心ある方々が結束し、操体の本質を次世代に伝えることを目的として「日本操体学会」を発足させることになりました。敬三の意思に従い、いわゆるピラミッド型の組織化は避けてきた操体の世界でしたが、今回は意識の共有とつながりを強めることを目的とした組織化になります。敬三の残した趣旨を遵守しその操体を継承していくことを目的に、お互いが気持ちよく操体に関わり活動できるような「日本操体学会」の運営を目指しています。